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僧侶
「……あなたが羨ましい。私、魔導士になりたかったわ……」
と、ある日彼女が言った。
「戦場でそりゃ僧侶はなくてはならない存在だしその腕に多くの人間の命が掛かってるしやりがいのある職業だとは思うけど?」
「……だったら別に」
問題ないじゃないか、と僕が続けようとそれを遮るように、
「助かる人だけじゃないし戦場に駆けていく人だけをただ見送って次に会うときは負傷した姿なのよ」
彼女は瞳に悲壮な色を浮かべて、ため息を吐く。
「……そうとも限らないじゃないか」
彼女は優秀な僧侶で、それだけに多くの戦場に駆り出されて。それだけ多くの人を看る。けれど、彼女が癒すのは兵士で、癒された兵士はまた戦場に行く。
――たぶん、この戦いが終わるか、その命がなくなるまで。
彼女は、そんな人々の背中を見送る。
いままでも、これからも。
彼女の癒しの魔法は、そんなもののためにあるわけじゃないのに。
だから、彼女は苦しんでいるのだ。
なら、僕に出来ることは、せめて彼女の苦しみを、少しでも和らげることだけ。
「――僕は、必ず生きて、」
帰ってくるよ、と続けようとした。
「――ムカつくのよ」
「……え?」
聞き間違いだろうか、と我が耳を疑った。けれど彼女は、しっかり顔を上げて握り拳を作って、瞳に浮かぶのは怒りの色。
ああ、その力強さといったら。まるで今削りだしたような宝石の輝き。思わず引き寄せらてしまう。
だが、そんな彼女にうっとりと見惚れる前に、大声が僕の意識を引き戻させた。
「後方支援?冗談じゃないわ!なによ僧侶だからって常に後方支援後方支援って!ウチの君主バカじゃない!?怪我人直すだけが僧侶じゃないでしょーが!!フザケてんにもほどがあるっつーの!!」
「ええと?」
「トパーズのシャイア様をみなさいよ!あの人僧侶だけど、そりゃ攻撃魔法も使える異才の人だけど思いっきり前線で戦いまくってるじゃない!僧侶の魔法はリザレクションだけじゃねぇっつーの!もっと魔法の勉強しろボケ君主っー!!!!」
「あの?」
彼女は肩で息をして、すっきりした顔で僕に振り向いた。
「と、いうことで、あたし直談判しに行くから」
そう言って、颯爽と僧服を翻す彼女。
――数日後、彼女は僕と並んで戦場に立っていた。
色々思うところはあったけれど、実は少し嬉しかったりする。
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